ルイジアナ美術館からオーレスンド(Øresund)海峡を望むと対岸はスウェーデン!
デンマーク (コペンハーゲンを中心として) コペンハーゲン市街を中心として、スウェーデンとの国境となる東部のオーレスンド海峡を臨む美術館まで
バルト海に面する国々
 北海とバルト海が挟むユトランド半島
デンマークはドイツと国境を接し、スカンジナビア半島に触れるように突き出たユトレヒト半島と周辺の多数の島からなる国だ。
不思議なことにその首都は大陸に連なる半島に在るのではなく、スウェーデンとの国境となる東部のオーレスンド(Øresund)海峡(エーレスンド・エーレ海峡とも言われる)に面したシェラン島(Sjalland)の東端に位置している。そしてその鼻先にはアマー島(Amager)という小島を要塞のようにして構えている。
この国はヴァイキングの歴史があり、小島の陰から世界の海に進出してきたというDNAがこの地を首都にしたということだろうか?
「コペンハーゲン」 について
コペンハーゲンの始まりはスロッツホルメン(Slotsholmen)島からだという。島と言っても小さな砂州のようなものだったらしい。
12世紀に要塞が造られ、やがては築城、そして外敵から襲われてはまた築城・・・の歴史を繰り返してきた。昔から強国スウェーデンに近いからその脅威に晒されていたばかりか、ハンザ同盟が隆盛になると海上交通の要衝を占めるこの町が狙われるわけである。
そして現在のクリスチャンスボー城を中心とした地区が運河で取り囲まれたような姿で、当初あった島の位置をかすかに今に伝えている。
 コペンハーゲン市内地図(赤マークはスケッチにリンク)
黒文字(Sjalland,Amager,Slotsholmen)は島名を示す
ここにマウスを乗せると 橋と幹線道路 を表示します
案内リスト
(コペンハーゲン市内)
- コペンハーゲン中央駅
- コペンハーゲン市庁舎
- ストロイエという名前の遊歩道
- ニューハウン
- カスタムハウス
- スロッツホルメン島というコペンハーゲン発祥の地
- 旧証券取引所
- ラウンドタワー
- ローゼンボー宮殿
(北へ35km郊外の町へ)
ルイジアナ美術館
コペンハーゲンはデンマーク語で"Kjøbmandehavn"(商人たちの港)に由来する。
デンマーク語の"København"は「ケベンハウン」、
英語では"Copenhagen"「コウプンヘイグン」、
ドイツ語で"Kopenhagen"「コプンハーグン」。
日本語の「コペンハーゲン」はどうやらドイツ語をローマ字読みしたものらしい。
コペンハーゲン中央駅 (Københavns Hovedbanegård / Københavns H)
スケッチ立ち位置の背後が有名なチボリ公園 2010.7.15 鉛筆・透明水彩
この駅はコペンハーゲンの要所でもあり各地と結ぶ鉄道がすべてこの駅舎のコンコース下階に集約されている。壮観なのはこのコンコースの広さ・高さで、巨大な二連アーチは木造によるもので、そのなかに数々の売店や案内所が並んでいる。改札は列車内が原則なので当然改札口はなく階下のプラットホームまで通過歩行が自由だ。
レンガ造の側壁と相まって内部はかなり暗いが、夜の長い地域としてはあまり気にしないのだろうか。高い天井から低く吊り下げられたランプは地上部だけを照らし、大空間のほの暗さには、夜中にこの町に着いた一日本人には一寸した驚きだ!
この必要部分だけを照らす手法は街路にも及び、両側の建物から引き渡されたワイヤーから道路中央部だけに下向きのランプで路面だけを照らしている。夏期だったので僅かの夜しか出会えなかったが、なんと美しい闇か!谷崎潤一郎が言っている「陰影礼賛」の世界だ!
(我々の生活はあまりにも夜の明るさに慣れすぎていることを北欧の夜を通して実感する)
長距離列車だけでなく、特に中近距離電車はエストー(S-tog)といって、重要な交通手段とされている。乗客同伴の犬も、自転車も乗り降り自由(有料だとは思うが未確認)でプラットホームでは多くの自転車があふれている。そのまま市街に出てさっそうと走り回れる環境があるので特に自転車は重要視されているようだ。
話は逸れるが、北欧一般では自転車専用道路が整備されていて、歩行者道路には決して入り込まない。もちろん歩行者も侵略しない。自転車の速度は20km平均で走ればノンストップになるよう信号調整されているので、運転スタイルはロードレーサー並みの構えである。子供を乗せる自転車は前二輪の三輪車が同じようにヘルメットをつけて走っているのだ。
駅前の道を挟んで有名な遊園地「チボリ公園」があり、その入口横には日本でもお馴染みのパン屋さんがあった。確か創業は広島と記憶しているが、それがここアンデルセンが生まれ育った町にまで進出しているとは・・・これも一寸した驚きである。
コペンハーゲン市庁舎 (Køvenhavns Rådhus)
重厚なレンガ造りの建物にコペンハーゲン一の高さを誇る尖塔(106m)は時を告げる鐘楼でもあり、建物正面広場と共に町のランドマークとなっている。(この塔を越えてはいけない高さ制限があるそうだが未確認)
左側に見える尖塔はホテルのもので、その間の広い通り中央に立つ像はヴァイキング時代の古楽器(巨大な角笛のようなもの)を吹いている二人の兵士?らしい。
市庁舎を改めてみると、中央部分にまとめて金で装飾された像や市章が
反射して豪華さをもり立てている。
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ストロイエ通り (Strøget)
デンマーク語で「歩く」という意味のストロイエは市役所広場(Rådhus Pladsen)からコンゲンス・ニュー広場(Kongens Nytorv)迄に連なる世界で初めての歩行者天国で、デンマークを代表する有名ブランドの店舗が建ち並ぶ繁華街である。[マウスをここにのせれば日本語で表示します]
ニュー広場 (Nytorv)
ストロイエを挟んで二つの広場が広がっている。北側は大噴水のある「ガンメル広場」で南側がこのスケッチの「ニュー広場」。右奥のギリシャ風建物は裁判所(らしい)。
そして目の前にするのは、旅行者の目には場違いな様式に見える立派な売店が広場に鎮座していた。朝早かったので窓を開けて準備中だが、昼間は広場いっぱいにテントだらけで、椅子とテーブルで埋め尽くされる。
アマー広場 (Amagertorv)
ストロイエは左の建物の隙間に続くが、広場は正面の噴水を中心にして右に広がる 2010.7.15 鉛筆・透明水彩
ストロイエの中でも中心的な広場で、少しずつ広がった撥型の平面は噴水を中心にして矩折りに南の運河*に開いている。
左から"Illums Bolighus" "Royal Copenhagen" "Georg Jensen"
この緩い形を周りの昔からの建物が構成しているのだが、人の集まるところで大事な場所(トイレ)はなんと!広場のど真ん中・地下鉄入口のように地下に用意されていた!
左側の建物並びには世界的に有名なブランド、ロイヤルコペンハーゲン、ジョルジュ・ジャンセンの店・・・と有名店が並び、コペンハーゲンを代表する商店街。
建物の後ろから、ひときわ高くそびえる尖塔は聖ニコラス教会(Skt Nikolajs Kirke)。
* この南の運河の対岸はクリスチャンスボー城で、その先はコペンハーゲン港であり、小さな小島・アマー(Amager)島との海峡でもある。この広場名称の由来と推測する。
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ラウンドタワーが見える道 (Købmagergade)
アマー広場から北に向かう道にはいると大きく弓形になった緩やかな坂道だ。さらに進んでいくと先の方に円筒状の建物が見えてくるのが、天文台として建てられた建物(ラウンドタワー)だ。
街角に建つ建物は教会ではないが、尖塔好きを物語っているようでさらにはピーターパンのような人物まで添えてある。(充分ランドマークの役割は果たしているね)
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ニューハウン (Nyhavn)
17世紀に造られたニューハウンは新港(Nyhaun)という名前の港町。アンデルセンが住んでいたアパートなどがあることでも知られる。
カラフルな建物がビッシリと建ち並んでいる様子は長い航海を終えた船乗りたちの船宿や飲み屋街でもあったのだろうか、運河沿いを歩いていると絵本に紛れ込んだような錯覚を覚える。 現在の船乗りは観光客に変わり、それを目当てにしたテントで埋め尽くされていた。
この変な船は灯台代わりに海に浮かべておく灯台船とのことで、現在は使われていないが貴重なものらしい。
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カスタムハウス (Custom house) という名前のレストラン
対岸はアマー(Amager)島という海峡に出るとそこは延々と続く運河で、いたるところが係留場のようだ。そんな荒んだ運河沿いの一軒だけ建っているレストランの前は海辺までウッドデッキを敷き詰め、ヨットも係留可能、通行人はもちろん通り抜け自由。日除けの下でビールを傾ければ対岸の景色は独り占めだ。(設計者は不明だが、ウッドデッキを甲板に見たてた船にしてしまうのはいね!)
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スロッツホルメン地区 (Slotsholmen)
この地区はかつての砂州スロッツホルメン島を核にして12世紀の要塞から始まり幾多の築城を繰り返して現在のクリスチャンスボー城を中心としたコペンハーゲンの重要な地区となっている。
運河に架かる橋の上からChristiansborg Slotが真正面に見える 2010.7.16 鉛筆・透明水彩
スロッツホルメン(Slotsholmen)はコペンハーゲン発祥の地とされる場所で、コペンハーゲンの中心部にある運河に囲まれたかつての島であり、その地区名である。クリスチャンスボー城があり、現在は城を取り囲むように運河が巡っている。
運河に架かる橋から見渡すと尖塔のオンパレード。建物左から、旧証券取引所(Børsen),中央にクリスチャンスボー城(Christiansborg Slot),ホルメンズ教会(海軍教会・Holmens Kirke),右端は国民的人気建築家ヤコブセン設計のデンマーク国立銀行(Danmarks Nationalbank)と連なる。その銀行に敬意を表して訪れてみたが建物の性格上大変厳格な雰囲気なので、ホ−ルロビーでおいとまして運河の対岸に建つねじれた尖塔の建物に向かうことにした。
旧証券取引所 (Børsen)
ソフトクリームのような尖塔のついた建物で、当初は教会かと思っていたが建物の形・規模からマーケットホールのようでもある。尖塔の渦巻きはどうやら地上をにらみつけている数匹の怪獣がしっぽを絡めて尖塔(戦闘?)状態になっている様子だ。それにしても外壁の模様が緻密に出来ていて素晴らしい。
後日調べてみたら、この建物は貿易品の取引所として建てられた(1619-40)もので、尖塔怪獣の正体は商いを守る4匹の竜だとのこと。神話からのものだそうで、ヴァイキング船の舳先にとりついている竜とダブらせて想い画いてしまう。
ラウンドタワー (Rundetårn)
右側の建物は本来は見えないが、スケッチの特権で合成して描いてみた。 2010.7.16 鉛筆・透明水彩
この塔は、クリスチャン4世王によって1642年に天文観測所として建てられたものだが、螺旋状になっている石畳のスロープが上にまで貫かれている・・・といっても屋上のすぐ下からは非常に狭い螺旋階段になっていたが、それにより屋上展望台に出ることができる。スロープ途中の窓辺はベンチのようになっていて休憩用なのだろうが、コア(芯の部分)に所々ニッチ(凹み)があったのはなんだろう。
このタワーは表通りから見たら独立して建っているように見えるが、裏の教会と繋げてある。その教会はトリニタティス教会(Trinitatis Kirke)で、1656年に大学生用の教会として開設され、後に一般向けの教会になったもの。
展望台の眺めは赤煉瓦の旧市街が全方位360度真下に広がり実に気持ちが良い。
中央の大きな尖塔は聖母教会(Vor Frue Kirke)でコペンハーゲンでは最も格式の高い教会とのこと。13世紀に建設されたがその後2度の火災に遭っている。
その右側の尖塔はサンクトペトリ教会(Sankt Petri Kirke)で15世紀に建設され、改築されていないのでコペンハーゲン最古の教会とされている。
左側の尖塔は高い方が市庁舎の尖塔で、低い方はその側に建つホテルのものである。
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ローゼンボー宮殿 (Rosenborg Slot)
この城はローゼンボー城庭園(Rosenbolg Slotshave)というデンマーク最古の庭園に建つ。当初は夏の離宮として造営(1606)されその後城として増築されている。
この建物を計画したのもクリスチャン4世でこの王は別称「建築王」とも言われる建物好きの王様だったようだ。スロッツホルメン地区の旧証券取引所やホルメンズ教会それから天文台(ラウンドタワー)もこの王様の指示によるものである。
北側の植物園(Botanisk Have)も散歩してみたら、最近日本で知った野菜?「ルバーブ」を見つけた。寒い地域の作物なんだね。
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ルイジアナ美術館 (Louisiana Museumof Modern Art)
この美術館はスウェーデンも間近というオーレスンド(Øresund)海峡に近く、コペンハーゲンから北へ約35km、電車で30分程の郊外・フムルベック(Humlebæk)駅がこの美術館の最寄り駅だが・・・、さらに徒歩15分ほどかかるというかなり不便な場所にある。 しかし美しい回遊式のモダンアート美術館として評判なので行ってみることにした。
途中で見掛けた住宅
下車したフムルベック駅前は何にもなく、小さな木造の住宅がこぢんまりと建ち並ぶ郊外の住宅地である。しかし駅舎は立派なレンガ造だ。短い夏を謳歌している花々がこぼれるように道ばたに溢れ、カラフルなかわいい家が立ち並んでいて美術館まで飽きさせない。
その中でちょっとユニークなのがこの住宅で、茅葺の屋根を大事にしているのを感じる。ユトランド半島の牧草地に建つ農家を移築したものだろうか。
外観は民家のようだが
外からきたら何のことない建物で、ヘンリー・ムーアの彫刻がなければ普通の住宅と見間違えるものだ。
左から事務棟・入口棟・車椅子入口と洗面棟、 外壁はピンクのツルバラでいっぱい 2010.7.15 鉛筆・透明水彩
 (出典:美術館HPより)
海辺、小高い崖の上に所有する広大な敷地に、音楽会や講演会の催せる現代アートのための世界で一番美しいと言われる美術館というのがこの建物の概要。
特筆すべきはスウェーデンも遠望できる海峡を眼下にした自然いっぱいの環境。そして、建物は控えめに、入館者は硝子張りの廊下や地下廊下で自然の間を縫うように巡る回遊式の楽しい美術館だということだ。
自然の景色と美術品との絶妙な配置が入館者を飽きさせずに、さらにはテラスにまで展開したレストランも充実していて申し分のない美術館である。規模の小ささが光った美術館である。
この建物はある富豪の邸宅だったものを美術館に改造したものだが、1958年から5回にわたる増改築を重ね、91年に地下のグラフィックウィングで完成している。
設計は建築家:Jorgen Bo と Vilhelm Wohlert。
最後まで分からなかった館名「ルイジアナ」は、「この建物の最初の持ち主であったAlexander Brunにちなんで名づけられている。彼は3度結婚したが、どの妻の名前もルイーズであった」とのこと(Wikipediaより)
詳しい建物の内容は美術館のリンクからどうぞ。
参考文献:
「物語 北欧の歴史」 武田龍夫著 中公新書


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