2.May.2006
田沢、下堂田から秋田駒ヶ岳を望む

草�g家

2006.5.2　鉛筆・透明水彩

　岩手（盛岡）と秋田（角館）を結ぶ秋田街道（角館街道）の秋田側の関所が生保内（田沢湖町）であり、この地の旧街道沿いに今も子孫がここで暮らしている大地主の大きな家がこの曲家である。

平面図

　秋田県中部の米所、仙北平野（旧仙北郡・現仙北市）をJR田沢湖線で北上していくと5月にもなるというのにまだ残雪が残り、近くでは水芭蕉の大群も見られる、そんな田沢湖駅で下車。　なだらかな傾斜地を30分程歩いて上ると山麓一帯に水田が開かれ、その中の一段と広い屋敷にある佇まいは一目で上層農家の格式ある構えである。
　スケッチの断りに伺ったら御当主が快く屋内にお招き下さり、主要な部屋の案内をしていただいた。主屋修理の際に出てきた破魔矢に天保の年号が記してあったともお聞きした。
　平面では「とおり」という土間の２つの動線空間がＴ字形に構成され、明快な平面とそれに伴った立面が美しい。　屋外では雁木・小店の役割を　屋内では土縁の機能も担っていると見受けたが、外部のとおりはこれが本来の小店であろうと思う。　２つの軸線の要の位置には28畳大の天井を張らない二重梁を現した板張り床の豪壮な「だいどころ」がある。（右図参照）
　主屋を建てたややあとに馬屋土間を直角に増築して茅葺き屋根をL字形に繋げた話をお聞きすると東北地方の 曲り屋造り の発生過程を見た思いをした。

案内パンフレットより引用

　当住宅は馬屋および土間の曲りと主屋からなる。　母屋は広い板敷のだいどころの裏に狭いなんど三部屋とし、「だいどころ」の東側に「なかのま」・「こざ」・上下の座敷を配する。　また、南面は入側をとり、そのだいどころとなかのま前は「とおり」とし、座敷前は入縁側とする。　主屋は全体に木太く、「だいどころ」の大黒柱二本の巾は30cmもある。　特に壮観なのはだいどころの上部意匠であって、二重梁の小屋組を見せる。
　主屋の柱間は桁行きでは7尺および7.5尺、梁間は6尺を基準とする。　一方土間の柱間は桁行きに6尺を用い、梁間は東側吹放部を5尺にとって、ほかは7尺を基準とする。
　土間・馬屋部分は妻に狐格子をはめた入母屋屋根を見せ、小壁は内法のマグサを利用して半間おきに束をたて、リズミカルな外部意匠を造る。　また馬屋土間の東側は一間の吹放になり、実用上の有効さに加えて陰影ある立面を形造る。　馬屋土間上部は太い梁を組んで、その上に屋根裏天井を造る。
　仕上は柱・差物とも美麗な鉋仕上げである。

参考文献「秋田県の民家」昭和48年刊　秋田県教育委員会編　（引用終わり）