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白鳥も飛来する多々良沼畔には Flanagan の兎が跳んでいる

群馬県立館林美術館
GMAT

Gunma Museum of Art,Tatebayashi


 群馬県は鶴が舞っている姿にたとえられる。ここ館林はその鶴の頭に位置している。 翼および尻尾は山岳地帯だが長い鶴首の部分は利根川と渡良瀬川に挟まれた扇状地で、嘴先でその二つの川が合流する所まで連なる。低地の館林を中心としてあちこちに沼が点在している。その一つが「多々良沼」でその傍らにこの美術館がある。
 県立美術館はすでに高崎市に「群馬県立近代美術館」として設計に当時、若き磯崎新を起用し昭和49年(1974)に実現しているが、2番目の県立美術館として平成12年(2000)に完成したものだ。
 この美術館は戦後の食糧難時期に沼地を農耕地に転用した場所をもとの沼に戻すべく計画されている。 そしてこの沼に流入する多々良川に接した敷地を堤から緩やかな傾斜地とし、この川を背に前面の広い原っぱを川から引き込んだ水路で包み込むようにして佇んでいる。

この広い野原いっぱい

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2005.03.21 鉛筆・透明水彩

 館林市内からかなり離れた場所なのでまわりは畑一面、そして沼・・・そして大きな駐車場が用意されている。 道なりに導かれて敷地内にはいると一面に広場が目の前に広がる。
背景の建物はアルミ色で、どこまでも空と混じり合い、横に広がるコリドーはガラスにより陰影を取り除いたようでもあり、広い原っぱだけがどこまでも草の色で広がっている。そしてただ一点、広場のアクセントが、その中心に位置している。 赤い外壁のそれは、逆円錐形の錘を天からこの敷地に落とし込んで水路を描いたコンパスの針足になっているかのようである。

入り口ではねる守護神?

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左: 2004.04.25 右: 2005.3.21 鉛筆・透明水彩

水路を渡り、建物からの水の流れに沿って行くとまず目にするのがこの兎だ。

題して Hare on Bell (Barry Flanagan:1983)

この兎の彫刻シリーズはよく知られているポピュラーなものなのだが、この飛び跳ねる姿は だだっ広い緑の原っぱにポツンと建つ美術館の存在を暗示しているかのようだ。

広場を巡るコリドー

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2005.03.21 鉛筆・透明水彩

 館内はガラス張りのコリドーが主要なアクセスになっている。通路際の水辺は建物の縁を消すだけでなく歩くほどに原っぱと一体に感じられ、自然と外の広場に導かれる。そこはまた水路沿いの遊歩道であり、進んでいくと広場を一巡することになる。 そしてまた兎の入り口に戻ってくることになる。

ここまで来て始めて気がついた。ここは、草原と水路が美術館そのものなのだ と・・・・

この館ではフランソワ・ポンポンの彫刻も多々収納していると聞く。 動物をテーマにする作家だから、狭い展示室でなく広い原っぱで飛び跳ねている作品群を常設展示で見てみたいものだ。

 この美術館別館には「彫刻家のアトリエ」としてポンポンのアトリエを模した建物がある。そしてポンポンの彫刻になぜこれほどまでに熱心なのか?と調べていくうちに意外なことで決められたらしいことが分かってきた。
館林市南部に「分福茶釜」で有名な茂林寺がある。その狸の腹鼓にあやかってポンポンということのようだ!
さらに不可解なことには収集した52体もの彫刻の実に6割以上にあたる38体がポンポンが遺言で禁じていた死後鋳造であることが明らかになり現在でも展示できてないとのこと。

 運営面では大いに問題があるようだが、この美術館の自然・環境に対する控えめな佇まい、そして原っぱこそテーマ(?)・・とは! 大いに評価したいものだ。
それにしてもピクニック気分で行くには良いが、あまりにもアクセスが悪すぎる。それだけが悔やまれる。

群馬県立館林美術館HPより

群馬県立館林美術館は、平成13年10月26日、2館目の県立美術館として開館しました。県立近代美術館のある高崎市から遠隔地にあたる県東部に位置し、より多くの県民の方々に美術作品鑑賞の機会を提供することを目的として、企画展示や群馬県の所蔵する国内外の作品によるコレクション展示のほか、様々な教育普及事業を行います。
S63.5.2 館林市文化協会から美術館建設の請願書が県に提出される
H元年.6.12 県議会に新県立美術館の趣旨採択される
H5.10.13 新県立美術館基本構想検討委員会設置
H7.1.23 新県立美術館作品購入専門委員会設置
H8.12.6 新県立美術館基本設計作成業務を株式会社第一工房に委託
H9.6.18 建設推進委員会設置
H11.2.26 館林市土地開発公社から建設用地購入
H11.3.10 工事着工
H12.12.1 工事完了
H13.4.1 群馬県立館林美術館発足
H13.10.26 開館

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建物は2000年完成、平成13年(2001)10月開館。2004年第17回村野藤吾賞を受賞している。
設計は第一工房:高橋靗一(たかはし ていいち)。



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