カトリック築地教会(Tsukiji Catholic Church / カトリック東京大司教区)
コンサートのスタートはこの教会から始まった。東京で最古のカトリック教会だそうだが、ギリシャ建築のような古典様式の外観には一寸戸惑いを覚える。石造のように見えるが構造は木造である。
この教会のHPから聖堂の歴史を覗くと、最初の建物は明治11年(1878)に煉瓦造の聖堂として現在地に建てられたそうである。写真から見事なバシリカ様式の教会と見受けられるが、大正12年(1923)の関東大震災で破壊してしまう。その後昭和2年(1927)に現在の建物が完成して、戦災にも遭わずに今に伝えられているのが現在の聖堂ということなのだ。
「明石町一帯は聖路加病院があったため空襲をまぬがれ、教会は戦災に会わずにすみました」との記述を目にすると、アントニン・レーモンドのことを思い浮かべる。(彼は戦時中、米国に帰国、日本家屋の効果的な空襲をアドバイスしていたと戦後我が国で語られている。その論功で彼の設計した聖路加病院は空爆戦略から外されていたのだろうか。)
(話を本題に戻そう)
ここの教会オルガンは「ハルモニウム」と呼ばれ、明治中期にフランスから輸入されたものだそうである。パイプオルガンではなくストップがたくさん付いた「リード・オルガン」・「足踏みオルガン」で、芸術的な表現も可能な楽器とされている。言わば懐かしい小学校にあったオルガンの高級版というところか? なぜかその脇に小型パイプオルガン(18世紀様式のオリジナル・イタリアオルガン)が設置されていて、こちらは礼拝室と一緒に並んでいる(右図)。その陰に置かれているのが「ハルモニウム」というわけである。
しかしこの「ハルモニウム」、音の響かない木造の教会にはリード管の響きがよく行き渡り心地よい。しかしなぜか低音域はフルー管の音色が響いていたのは私の耳の聞き違いだろうか?それともパイプオルガンと連動しているのだろうか・・
(日本でオルガンというとリードオルガンをさすが、西欧ではパイプオルガンのことをいう)
ハルモニウム仕様
ストップ数:11、鍵盤数:61鍵、2つの踏み板による送風、ふいごの構造は圧縮型、
製作会社については不明
オルガン仕様
幅265×奥行90×高さ290cm、パイプ総数:282本、ストップ数:6、
作者不詳の18世紀様式のオリジナル・イタリアオルガン
(築地風琴会案内書より)追記20101230
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この礼拝堂は病院の専属施設であり、入院・外来の患者や病院職員の祈りの場なので、こういう機会でないとなかなか入りにくい。しかしリレー最初のカトリック築地教会に溢れた人たちでたちまち埋まってしまい、残念ながら入場出来なかった。持て余し時間をタップリと取ることが出来たおかげで、かつての「外国人居留地」の片鱗を知るという久々の収穫であった。 中に入れなかった鬱憤を晴らすため聖歌隊のホームページから掲載写真を借用して、ここに貼らせてもらう。
外観からは想像できない本格的なゴシック様式でまとめられた内部のようで、天井の高さは我が国にある教会としては珍しいプロポーションのものだ。さぞやオルガンの音色が響き渡ることかと想像される。
築地本願寺【本願寺築地別院】(Tsukiji Hongwanji Temple / 浄土真宗本願寺派)
仏教寺院でありながら石造の異国風建物の雰囲気がなぜかこの歳になるまで私を寄せ付けなかった。東京帝大教授・伊東忠太の設計になるのはよく知られていることだが、このインド風建物・・・よく考えてみればインド発祥の仏教であるからこそ、彼の地の様式を採用したことは伊東博士にとっては当然のことだったのだろう。そしてこの中に西欧文明の結晶とも言える「パイプオルガン」があろうとは・・・信徒は斬新な発想をするものである。
2010.9.11 鉛筆・透明水彩
三会場の中で一番広く、大きなオルガンが設置されている。大小約2,500本のパイプで構成されたパイプオルガンは旧西ドイツのワルカー社製のもので、昭和45年(1970)に(財)仏教伝道協会によって寄進されたという。
内陣を正面にして大きな期待を持って席で待つ。初めはガブリエリ、J.S.バッハ、フレスコバルディ・・・と西洋オルガン曲から始まり、当寺院の委嘱作品等へと尺八や鈴も交えて演奏される。

横に広がったオルガンでも小さく見えるほどの大空間
やがて法要が演奏と一体となって進み、数名の奏楽士(讃歎衆)による雅楽が始まってから様相が一変した。広々とした巨大空間ではあるが何となく響きが悪く(残響不足)オルガンには不向きと覚めた気分でいた会場・・・それがオルガンとの競演に、笙(しょう)・篳篥(ひちりき)や釣太鼓(つりだいこ)の音が隅々まで凛と響き渡るのだ。
外観から想像していた屋根に戴いている火焔太鼓のような巨大構造物は何だったのだろう。室内空間として利用されていれば西欧のゴシック建築に決して引けを取らない響きとなったであろう。 しかし妖怪大好きな伊東忠太博士でもパイプオルガンまでは描いていなかったことだろう。
オルガン仕様
パイプ総数:1990本、ストップ数:26、
製作:ヴァルカー社(ドイツ)、設計:伊藤完夫、組立:渡辺伝/伊藤満、
(築地風琴会案内書より)追記20101230
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昼間から始まった三会場のコンサートも、終わってみるとすっかり暗くなっていて、この大寺院もライトアップされ普段と違った様相。充実した一日を感謝してあとにした。
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後日、NHK番組「ブラタモリ」(10/7)で気になる屋根裏を写しだしていた。なんと鉄骨造のガランとした空間だけであった!!
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Mozilla, Chrome, Opera & I.E. に対応(20150123)